「空飛ぶクルマ」と「ドローン」
※出典:経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181220007/20181220007.html)
交通インフラに革命をもたらす「空飛ぶクルマ」
株式会社SkyDriveは2020年1月6日に現在開発中の「空飛ぶクルマ」の有人飛行試験を2019年12月に開始したと発表しました。2023年の事業化を目標としています。また、トヨタ自動車も「空飛ぶクルマ」の開発・実用化を進めるアメリカベンチャー企業へ約430億円の出資を決めています。
2020年1月8日、アメリカ配車大手ウーバー・テクノロジーズが韓国のヒュンダイ自動車と「空飛ぶクルマ」開発のために提携することを発表しました。また、アメリカ カリフォルニア州にあるKitty Hawk(キティホーク)は2人乗りの空飛ぶタクシーの試験運用をニュージーランドで開始しています。さらに、2019年7月に同じく空飛ぶタクシーを開発するアメリカ ボーイング社との提携を発表しています。
このように世界中で「空飛ぶクルマ」の開発競争が加速していて、次世代の主要な交通インフラとなることは間違いありません。
空飛ぶクルマが事業化すると様々な場面での活用が想定されます。
例えば・・・・
- ・移動インフラとしての活用
- 世界中で都市部への人口流入は年々進んでいます。そのことによる弊害として、交通渋滞の発生があり、現代の社会問題として課題となっています。また、地方の遠隔地の交通インフラ整備も課題です。山間部や離島などでは現在移動手段が限られてしまっており、「空飛ぶクルマ」の実用化によって、都市部の交通インフラの課題、地方の交通インフラの課題を解消することが期待されています。
- ・物資の輸送・回収
- こちらは世界や日本でもドローンで実証実験が行われていますが、「空飛ぶクルマ」によって飛行距離や積載できる重量がドローンよりも増えれば、より活躍の幅が拡がります。
この他にもこの先新たな活用方法が生み出される可能性があり、歴史的転換点になるかも知れません。
空飛ぶクルマはドローンなのか?
※出典:経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181220007/20181220007.html)
そもそも、「空飛ぶクルマ」と「ドローン」にはどんな関係があるのでしょうか?「空飛ぶクルマ」には様々なタイプがあり、プロペラを使い飛行するもの、翼を使いエンジンで推進力を得て飛行し、道路走行時には翼を格納するタイプなどがあります。
特に「空飛ぶクルマ」の中で最も開発が進んでいるのがドローンをそのまま大型にして、人が乗ることを想定したタイプです。
「ドローン」は「無人航空機」と分類され構造上人が乗ることが出来ないもので、機体の操縦者が遠隔操作や自動操作で飛行させます。一方、「空飛ぶクルマ」はオペレーションを自動化するように設計される予定ですが、人が乗ることを想定しているため「無人航空機」ではなく、ヘリコプターと同じく「航空機」に分類されることが予想されます。この点、法律的に厳密にいえば「空飛ぶクルマ」と「ドローン」には違いが出てくると言えるでしょう。
ただ、技術的にいえば先程も述べたようにドローンの構造に倣ったものが開発されています。「航空機」に分類されるか「無人航空機」に分類されるかではどのような違いがあるのでしょうか?
法律や制度の制定は?
「空飛ぶクルマ」は技術的には数年後のごく近い将来に実現可能といわれていますが、空を飛行するものなので、法律の整備が必要になってきます。そこで、一つの疑問となるのが、「空飛ぶクルマ」が飛行機・ヘリコプターのような航空機に分類されるのか、ドローンのような無人航空機に分類されるのかということです。
「航空機」に分類される場合は、自動車における車検にあたる「耐空証明」を取得し機体の運用限界について基準を満たしていることを検査し、証明しなければなりません。その為には、実証を通じて少しずつ飛行実績を積み重ねるしか有効な方法がありません。つまり、非常に時間が掛かることが予想されます。
また、無人航空機に分類される場合は、航空出来る時間や空域が厳格に定められているため、国土交通省の許可・承認が必要になってきます。他の航空機との兼ね合いもあるので、管制方法も考える必要があります。さらに「空飛ぶクルマ」の場合は飛行高度が航空機やヘリコプターよりも低くなってくる事が予想されるため、法律に関しては十分な議論の余地がまだあります。
どちらに分類されるとしても、現状の法律では、空飛ぶ自動車が実用化されるのは、日本においては高いハードルがあると言えるでしょう。
また、低空での飛行となることで、上空権の問題も関わってくる可能性もあります。
日本の法律では、「土地の所有権はその上空にも及ぶ」とされていて、その具体的な高さは明確には規定されていませんが、航空法の規定より地上の建物の高さからおおよそ300メートル上空にまで及ぶというのが一般的な解釈です。
さらに、様々な場所での離発着も想定しているので、その場面に応じてインフラやルールの設定が必要になってきます。
こうして列挙してみると、実はドローンが関わってくる法律やルール・条例がほとんど空飛ぶクルマでも気にするべき法律であることに気付きます。
- 「空飛ぶクルマ」に関わってくると予想される法律
- ・航空法(航空機として分類される?)
- ・民法
- ・各自治体の条例等
- etc・・・・・
国としての姿勢は?
国の施策としては、2018年8月より経産省と国交省が合同で「空の移動革命に向けた官民協議会」を実施し同年12月に日本における「空飛ぶクルマ」の実現にむけてロードマップを取りまとめました。2023年に事業として空飛ぶクルマの活用が始まり、2030年代から人・モノの移動の実用化を初め、活用の幅を広げる想定です。冒頭述べたように2019年12月には国内で有人飛行試験が開始されています。
経済産業省は、電動化・自動化などで空を飛ぶコストが下がり、主な交通手段の一つとして人々が検討するようになったときに、車や電車などと比較して、どうなのかというのも議論したい考えがあります。
海外に目を移しても、モノの移動から段階的に空飛ぶクルマを活用した事業のスタートを想定しています。米国ウーバー・テクノロジーも2020年代には本格的な街中での運用というのは考えておらず、2030年代以降に本格的に定着することを見込んでいるようです。
今後の法改正に注目
「空飛ぶクルマ」は「航空機」に分類される見込みです。政府が空飛ぶクルマの実用化を見越して、航空法改正という手順を踏む可能性は高いといえるでしょう。
ドローンの運用時でもそうですが、日本では技術的な進歩や事件・事故が発生してからその都度法律が改正されるという流れがあります。この先、「空飛ぶクルマ」が開発され、事業で活用される場面が増えれば、法改正が頻繁に行われることになるでしょう。
まとめ
空飛ぶクルマは現時点で日本での導入までのハードルは法関係の整備を考えると非常に高いといえます。しかし、交通インフラの革命とまで言われる「空飛ぶクルマ」が開発・実用化されれば、現在の生活は間違いなくさらに便利になるでしょう。
また、空飛ぶクルマはドローン型タイプの開発が最も進んでいるという事で、ドローンと非常に似通っているということもあり、今のうちにドローンに関する構造・法律を学ぶことで近い将来に来るべき交通インフラ革命に即座に対応できるかもしれません。
ドローンスクールではドローンに関する法令や構造を短期間で学ぶことができます。ドローンや「空飛ぶクルマ」に興味がある方は是非ドローンスクールに通ってみてはいかがでしょうか?
ドローンに関する「ニュース」・「資格」・「免許」・「法律」・「機体」・「スクール」などはこちら!